Sheraton Dhakaを出た瞬間、物理的に「殴られた」ような感覚を覚えた。
それは熱気であり、騒音であり、そして何より圧倒的な「未完成さ」の衝撃だった。
背後には、世界中どこにでもある、洗練された香りのするシェラトンホテルが聳え立っている。しかし、自動ドアを一歩出れば、そこは全く別の理屈で動く世界だ。
1. 高級ホテルの隣にある「未開発」
ホテルに入るためには、空港並みの厳重な荷物検査と金属探知機のゲートをくぐる必要がある。
そこはまさに、外の世界から切り離された「要塞」だ。
しかし、その厳重な警備を背にガラス扉を出てすぐの光景がこれだ。
未舗装の路肩、雑然と並ぶ露店、そして建設途中なのか取り壊し途中なのか判別のつかない構造物。
「高級な立地」のはずだ。しかし、ここには先進国で言うところの「都市計画」の匂いがまるでしない。
最高級ホテルの真横に、こうした手つかずの、あるいは放置された空間が広がっている。
これを単に「汚い」「遅れている」と切り捨てるのは簡単だ。
しかし、投資家としてこの光景を見たとき、脳裏に浮かぶのは別の感情だ。

上層階から見下ろすと、そのコントラストはさらに鮮烈になる。
眼下に広がる空き地では、大型重機やクレーンが動いているわけではない。
驚くべきことに、作業員たちが人力で水たまりを埋めているのだ。
近代的な建設プロセスとは程遠い、あまりにアナログな光景。
しかし、そこには確かに「形を作ろうとする意志」だけが存在していた。
2. 聖域としてのシェラトン
一方で、ホテルの中に戻れば、そこは完璧な「聖域」だ。

冷房は完璧に効き、スタッフの英語は流暢で、提供される食事も世界基準だ。
この「断絶」こそが、現在のバングラデシュを象徴している。
富裕層や外国人が過ごす空間と、一般市民が生きる空間の間には、分厚く透明な壁がある。
しかし、その壁の向こう側にある「未開発エリア」こそが、これからオセロのようにひっくり返っていく場所なのだ。
3. 問い:未開発か、伸びしろか
この強烈なコントラストをどう捉えるか。
- 悲観的視点:都市インフラすらまともに整備できない、リスクだらけの国。
- 楽観的視点:最高級ホテルの隣ですら開発余地が残されている、ブルーオーシャンの塊。
すでに完成されたパズルに、新しいピースをはめ込む余地はない。
しかし、ここはまだフレームしか出来上がっていないパズルのようなものだ。
シェラトンの窓から見える「空白」は、全てがこれからの成長余地(アップサイド)に見える。
不便で、汚くて、未整備だ。だからこそ、そこに資本を投じる意味がある。
「快適な場所に、高いリターンは落ちていない。」
次にこの街を訪れた時、この景色はどう変わっているだろうか。
その変化の速度に賭けることこそが、新興国投資の醍醐味に他ならない。


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