「定年まで働いて、退職金で老後を過ごす」── これが、日本の標準的な老後設計だ。だが、これは 他人軸の老後 の典型例でもある。
今日は、自分軸の老後設計とは何か、を書いていく。
1. 退職金幻想の、終わり
団塊世代の退職金は、平均 2,000〜2,500 万円だった。30 代の自分が 60 歳になる頃、この水準は維持されているだろうか。答えは、ほぼ確実に「ノー」だ。
- 退職金規程の縮小
- 確定給付型から確定拠出型への移行
- 定年延長と引き換えの給与カーブ修正
- 会社そのものの存続リスク
「定年まで頑張れば、まとまったお金が入る」という前提自体が、構造的に崩れつつある。30〜40 代が「最後の退職金世代」になる可能性は、現実に高い。
2. 「皆と同じ老後」が無理ゲーになる時代
そもそも、「皆と同じ老後」というロールモデルは、戦後の経済成長期に成立したフィクションだ。終身雇用+年功序列+退職金+公的年金という4点セットは、人口ボーナスとインフレ成長を前提とした、特殊な歴史条件の産物だった。
その条件はもう揃わない。「皆と同じ」を目指すこと自体が、破綻リスクの高い戦略になっている。
であれば、判断の軸を変えるしかない。「皆と同じ」ではなく、「自分にとって持続可能か」で判断する。これが自分軸の老後設計の出発点だ。
3. 自分軸の老後 = 自分のペースを老後にも維持する
自分軸の老後を一言で定義すると、「自分のペース」を老後でも維持できる状態だ。
- 住む場所を、自分で選べる
- 会う人を、自分で選べる
- 1 日のリズムを、自分で決められる
- 使うお金を、自分で配分できる
これらが達成できているなら、退職金がなくても、年金が想定より少なくても、人生として破綻はしない。「お金で買えないペース感覚」こそが、最終的な自由だ。
4. 30代の今、老後に向けて積むべきもの
退職金幻想を捨てるなら、30 代の今やるべきことは、3 つある。
- 退職金に依存しない資産形成:個人で 30 代から積み立てる前提に切り替える。退職金は「ボーナス」扱いで、計画には入れない
- 会社からも組織からも独立できる収入源を 複数持つ:副業、不労所得、ニッチなスキル ── 何でもいい。「会社が消えても、生活が消えない」状態
- 消費水準を上げすぎない:稼げる時期に消費水準を上げすぎると、退職後にダウンサイズする苦痛が大きい。最初から「ちょうどいい水準」を見つけておく
この 3 つができていれば、退職金がいくらでも、年金がいくらでも、自分軸の老後は維持できる。他人と同じレールに乗らないことで、レールが消えても困らない。これが、現代の老後設計の本質だ。
5. 変わり続ける必要を、認める
30 代で立てた人生計画を、50 代でそのまま守る必要はない。20 代で「これが必要」と思っていたものは、40 代で不要になることがある。逆に、若い頃には興味のなかった「家族との時間」が、ある時期から急に最重要になることもある。
老後設計を「30 代で完成させて、60 代でそのまま実行する」という考え方、いわゆる終身雇用の考え方は、自分が変わらないという前提に立っている。だが、その前提自体が誤っている。30 年の間に、自分も世界も大きく変わる。
だから、老後設計は 定期的に書き換え可能なドラフト として持つのが正しい。「とりあえずこの方向」「今のところこの想定」「5 年後にまた見直す」── このゆるさこそが、最終的に最も持続可能な設計になる。「皆と同じ老後」を捨てるとは、未来の自分のための余白を残すことだ。
「皆と同じ老後」は、もう来ない。自分軸の老後を、30 代の今から設計するしかない。
【免責事項】本記事は筆者個人の見解であり、特定の金融商品・人生選択を推奨するものではない。資産形成の最適解は人によって異なる。投資判断はすべて自己責任で行ってほしい。

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