バングラデシュやインドの株を調べていると、「配当15%」「配当100%」といった数字をよく見かけます。一見すごい高利回りに思えますが、これをそのまま利回りだと受け取ると、実態を6〜7倍も見誤ります。原因は「額面(par value)」という、いまの日本株では使われなくなった考え方にあります。
この記事では、なぜ「配当15%」が実際には2%程度の利回りなのかを、図とともに整理します。南アジア株(バングラ・インド・パキスタン・スリランカ)に共通する話です。
目次
1. 結論:「◯%配当」は額面に対する%
先に結論です。バングラデシュなど南アジアの「配当◯%」は、株価ではなく「額面」に対する%です。だから実際の利回り(あなたが払った株価に対する利回り)に直すには、次の式で変換します。
実質利回り =(額面 × 配当%)÷ 株価
たとえば額面10タカ・株価69タカの株が「配当15%」と言っても、実質利回りは(10×15%)÷69=約2.17%。見出しの「15%」とはまったく別の数字です。
2. 額面(par value)とは何か
株式には2つの「値段」があります。
- 額面(par value/フェイスバリュー):株式を発行したときに決めた”名目上の元値”。会社法・帳簿上の基準値で、バングラデシュ株では多くが10タカ。あなたが今その値段で買えるわけではありません。
- 株価(市場価格):実際に市場で売買されている値段。あなたが払う額です。
配当はこのうち額面を基準に「%」で宣言されるのが南アジアの慣習です。「配当15%」は「額面10タカの15%=1株あたり1.50タカを配ります」という意味で、利回りを表しているわけではありません。
3. 日本人がつまずく理由
par value(額面)という概念自体は世界共通で、バングラデシュ独特のものではありません。独特なのは「配当を額面の%で言う表記スタイル」のほうです。
- 南アジア(バングラ・インド・パキスタン・スリランカ):配当を「額面の%」で宣言。「配当200%」のような表記も普通。
- 米国:「1株あたり◯ドル」または「利回り◯%」で表示。
- 日本:「1株あたり◯円配当」で表示。
じつは日本は2001年の商法改正で「額面株式」を廃止しました。それ以前は「額面50円」の株が普通にあり、年配の投資家は「額面割れ」という言葉を覚えています。いまの日本株に額面はなく、配当は「1株◯円」で示されます。つまり額面ベースの配当%に馴染みがないのは当然で、バングラが変なのではなく、日本(と米国)が額面表記を使わなくなった側、というのが正確な構図です。
4. 例:「配当15%」を実利回りに直す
実在の例で見てみます。BRAC Bank(額面10タカ)が「現金配当15%」を宣言し、株価が69タカだとします。

- 配当額=額面10タカ × 15% = 1株あたり1.50タカ
- 会社の宣言:1.50 ÷ 10(額面)= 15%
- あなたの実利回り:1.50 ÷ 69(株価)= 約2.17%
同じ1.50タカでも、安い額面(10)で割れば大きく、高い株価(69)で割れば小さく見えます。差が出るのは、株価が額面の69 ÷ 10 = 6.9倍まで上がっているから。だから「見かけ15% ÷ 6.9 ≒ 実質2.17%」となります。株価が額面から離れるほど、額面ベースの配当%は実態より大きく見えるのです。
たとえとして、額面1万円の金券が人気で市場では6.9万円で売られている、と考えると分かりやすいです。発行体が「額面の15%(=1,500円)を配ります」と言っても、あなたは6.9万円払って買ったので、実利回りは1,500 ÷ 69,000 = 2.17%。「15%」は1万円に対する数字で、あなたが払った額とは無関係なのです。
5. もうひとつの罠:「株式配当」は利回りではない
南アジアの会社は、現金配当と並んで「株式配当(ボーナス株)◯%」を出すことがよくあります。「株式配当15%」は、100株持っていると15株もらえる、という意味です。これを利回りに足したくなりますが、注意が必要です。
株式配当を出すと、理論上は株価がその分だけ下がります(会社の価値は変わらず、株数が増えて1株が薄まるだけ)。15%の株式配当なら、株価は69 → 60へ調整され、株数が15%増えても合計の価値は同じ。つまり株式配当そのものは”価値中立”で、現金のように手元に入る利回りではありません。
そのため「現金15% + 株式15% = 配当30%」という見出しは、額面マジックと株式配当マジックの二段重ねで、実際のインカム(手元に入る現金)は現金配当の約2.17%だけです。株式配当の価値が現実に残るのは「権利落ち後に株価が理論ほど下がらなかった場合」で、それは市場の動き次第であって、約束された利回りではありません。株式配当は「インカム」ではなく、株数が増えて将来の値上がり余地が広がる「キャピタル側」の効果と捉えるのが正確です。
6. 南アジア株を見るときの変換ルール
南アジア株の配当を見たら、見出しの%に驚く前に、次の手順で実利回りに直す癖をつけましょう。
- 配当%を1株あたり金額に直す:額面 × 配当%(例:10 × 15% = 1.50タカ)
- それを株価で割る:1.50 ÷ 69 = 約2.17%(これが実利回り)
- 株式配当(ボーナス株)は利回りに足さない:価値中立。キャピタル側として別に考えます
- 外国人は配当の源泉税も引く:国・区分により税率が異なる(バングラデシュの外国人個人は現金配当に30%源泉)
「配当100%!」のような数字も、額面(普通10)に戻して株価で割れば冷静に評価できます。インド株・パキスタン株でも同じルールが効きます。
7. まとめ
- 南アジアの「配当◯%」は株価ではなく額面に対する%。
- 実質利回り =(額面 × 配当%)÷ 株価。株価が額面より高いほど、見出しの%は実態より大きく見えます。
- 「株式配当◯%」は価値中立で、利回りではありません。
- 日本は2001年に額面を廃止したので、馴染みがなくて当然。
配当の数字に惑わされず、「実際に払った額に対していくら返ってくるか」で見れば、新興国株の評価はぐっと現実的になります。
バングラデシュ株を実際に買うには、現地での証券口座開設が必要です。手順はバングラデシュ証券口座開設ガイドで解説しています。また、実際にBRAC Bank株を保有したリターンの実例はこちらの記事でまとめています。
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