初心の手紙 vol.18 ── 戦争と貯蓄

初心の手紙 vol.18 ─ 戦争と貯蓄

日本人は貯金が好き。

わたしの親は、お年玉をもらうたびに、貯金しなさいと言っていました。
お年玉をくれるおばあちゃんも、大事にとっておきなさい、と。

ずっと不思議だったんですが、なんで、上手に使いなさい、じゃなくて、大事にとっておきなさい、なんでしょうね?

この話を、周りにすると、大抵の方は、身内から似たようなことを言われた経験があるようです。
となると、どうやらこれは、日本全体に言える傾向なんだとか。

じゃあ、なんでそもそも、貯金なのでしょう?
だって、昔の日本人は寺子屋で、複利の話を、実学として学んだという記録が残っているんですよ?

結論から言います。

戦争をするために金が必要だったから、です。

戦争のために金が必要だった ── 1930 年代の貯蓄推奨

日清戦争。日露戦争。
日本は、国債を発行することで、戦費を賄っていました。
第一次世界大戦では、逆に国債を引き受ける形で、列強諸国を眺めやっています。

ところが、世界恐慌が発生します。
世界経済の中心であった合衆国の壊滅的な暴落に連鎖する形で、全世界の株価が大暴落しました。
株の損失を埋めるために、投資家は様々な地域、分野から資金を引き上げざるをえなかった。
新らしいビジネスも、技術も、サービスも成り立たない。
個人の所得は減少し、税収は激減し、物価も下落します。アメリカの失業率は 23% に上昇。

人類が未だかつて経験したことのない勢いで、経済が減速しました。
信用取引の崩壊、あるいはレバレッジの消滅ですね。

貨幣の価値が毀損し、市場を回復させるためには、通貨を刷る必要があり、アメリカは金本位制からドル為替本位制への移行を余儀なくされます。
金から信用へ、通貨の価値の再定義を余儀なくされるレベルの質的変化です。
加えて、各国は統制経済を敷くことで、資本の流出を抑えようとします。

日本経済も大打撃を免れませんでした。

しかも、金融不安は、戦後の賠償に苦しんでいたドイツを直撃。
やっと戦争から立ち直りつつあったドイツ国民は、再び絶望のどん底に叩き落とされ、ナチズムが台頭し始めます。

どうやら、戦争が起こるかもしれない。
そんな悪い状況が政府の中で描けてしまうほどには、状況が悪くなっていく。

戦争は金食い虫です。
とんでもない資産を、弾丸として吐き出しているという一点のみに注目しても、軍隊が資本を食い潰していくことは容易に想像できるでしょう。

ところが、今回の戦争は、日清、日露戦争とは状況が異なっています。
どの国も、他国に手を差し伸べる力はありません。国際で資金を調達しようとしても、買い手がいないのです。
そもそも、世界中が相対していがみ合ってるわけですから、国外からお金を調達する術は元より存在しません。

じゃあ、どこから戦費を調達しようか、と考える。
答えは、国民から、です。

政府がそう結論付けることは、そう不自然なことでもないでしょう。
具体的にどうやったか?

貯金、もっと具体的には、定期預金の推奨です。

これは、郵政貯金残高が 1930 年代に一貫して増加していることをみれば明らかでしょう。
のちに、国家総力戦となり、お金だけでなく、鉄まで徴収せざるを得ない事態にまで追い込まれたことは、皆さんも歴史で学ばれた通りです。

戦後復興と「救国貯蓄運動」

また、戦後復興のための資金を確保するため、「救国貯蓄運動」を展開。
戦後の混乱期であるが故に、仕方のない行為であるとは思いますが、この時の考え方が、貯蓄は善である、というイメージに近づいたのかもしれません。

もっとも、金利が高度成長期のまま持続するのであれば、貯金することは間違いではないでしょう。
国は、貯蓄を推奨する代わりに、制度として高利回りを約束していたからです。

太平洋戦争前で 3% 弱、1974 年で 4% 程度あります。
でも、今は 0.001%。

そりゃあ、貯金したところで、お金は貯まらんでしょう。100 年前の理屈で、今この瞬間を生き残ろうとしているんですから。

100 年前の理屈で、今を生きていないか

じゃあ、投資を始めよう、となるかというと、どうやらそうでもないらしい。
なんでだろう?

そう思い返してみたところで、冒頭に戻るわけです。
わたしの親は、お年玉をもらうたびに、貯金しなさいと言っていました。
お年玉をくれるおばあちゃんも、大事にとっておきなさい、と。

どうやら、わたしのお金に関する常識は、親から受け継いだもののようだな、と。
ひょっとしたら、わたしたちの、かもしれません。

そして、わたしの祖父母は、過去の成功体験から、つまり高度成長期の恩恵から、貯金しなさい、というアドバイスをくれたのでしょう。
そして、そもそもの始まりは、国が貯蓄を推奨し、みなが貯蓄に励むよう制度を設計していたところにあるようです。

なんとなく常識だと思っていたことは、どうやら常識ではないらしい。
少し歴史を紐解いてみると、こんな事実がわかるようになっています。

知識って、大事ですね。

この構造を理解したならば、じゃあ、わたしのような若い世代はどうすればいいでしょう。
わたしは、「株式投資」がひとつの答えではないかと考えています。

お金の常識を疑ってみると、面白い発想がでてくるかもしれません。

2021 年某日

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